2021年8月11日
「白河QOL向上プロジェクト」~R6年度調査~
2025年12月27日公開
日本は世界に先駆けて超高齢社会となりました。国民の目標は、単なる延命ではなくQOL (自立して生き生きと生活できること)を維持することに変わりました。このような背景で、 白河市と、福島県立医科大学白河総合診療アカデミー、白河厚生総合病院、京都大学が共同し、2020年に「白河QOL向上プロジェクト」が開始されました。本プロジェクトでは、2020年は60~75歳の白河市民を対象に調査を行い、2021年以降は76歳以上の方々にも対象を拡大しました。事業開始から5年目となる2024年には、約3,658名の住民の皆様にご参加いただいています。
参加された皆様の健康状態、生活習慣について以下のようなことが分かりました。
(回答者は日常生活を支障なく過ごされている方が多く、かつ本事業に同意をした健康意識の高い方であることに留意をして、慎重に結果を解釈する必要があります。)
《LINE公式アカウント「QOL LINE」のご紹介》
「QOL LINE」では、今回取り上げた「健康上のお困り事」についての詳しい説明や、どうすればお困りごとを改善できるかのヒントを定期的に配信しています。また「健康で長生き」のための講演会の開催情報もお知らせします。
さらに、毎年実施するQOL向上プロジェクト調査の対象者の方は、LINEで回答いただけます。ぜひ、ご登録ください。
登録はこちら⇩ 登録に必要なグループコードは961です。

● QOL
住民の方々に「健康上のお困り事」について伺いました。 「尿の問題」「腰痛」「腰痛以外の関節痛」が頻度の高い上位3項目でした。12項目のうち9項目では、3割以上の方が何らかのお困りごとを抱えており、全体として頻度が高いことが明らかになりました(図1)。
図1. 健康上のお困りごと(お困りごとの有無)

また、お困りごとがある方全体で、「中程度」以上にQOLがさまたげられている人は平均42.5%でした(図2)。
これらのお困りごとの中でも、特に頻度が高く、QOLへの影響が大きいものについて、引き続き、講演会やLINEでの配信の題材としていきたいと考えています。
図2. 健康上のお困りごと(お困りごとによって中等度以上にQOLがさまたげられた割合)

● 運動機能セルフチェックによる要支援・要介護リスクの評価について
複数年の調査データを繋げて分析することで分かってきたこともあります。今回、R3年度の時点で要支援、要介護認定を受けていない方を対象に、R3年度調査時(R3年11月1日と定義)の運動機能とその後約4年間(R7年7月31日まで)に新たに要介護I以上の認定を受けた割合の関係を分析しました(図3)。
例えば、片足立ちで足を回す運動ができる回数が減るごとに要介護認定の割合が大きく上昇していました。他の運動でも同様の結果が確認されています。ご自身で簡単にできる運動テストによって将来の要介護リスクを知ることができることが分かりました。リスクの高い方々が、どのような運動をすれば良いかなどについて、今後LINEで配信していく予定です。
図3. 男女別, 片足立ち足回しと要介護
・男性 2,027名、女性2,403名、計4,430名

■ かかりつけ医の質と、心の問題の相談行動
この調査では、かかりつけ医療機関での患者経験を、「困ったときに頼れると感じられるか」「必要な診療や助言をまとめて受けられているか」など、患者さんの受け止め方をもとに調査しました(図4)。
その結果、患者経験が良いと感じている人ほど、心の問題があるときに、かかりつけ医療機関の先生方やスタッフに相談している割合が高い傾向がみられました。気分の落ち込みや不安などの心の悩みは、誰にとっても相談しにくいものですが、日頃の診療を通じて「相談しやすい」と感じられていることが、実際の相談行動につながっている可能性が考えられます。かかりつけ医を持たれていないご高齢の方々は、ごご検討してみてはいかがでしょうか? 今後は、かかりつけ医の先生方ともこのような結果を共有し、地域全体でよりよい医療につなげていきたいと考えています。
図4. 患者経験と心の問題を相談する行動の関連

■ 加齢に対する期待度と健康的な生活習慣の関連
この調査では、「年をとることをどのように受けとめているか」という考え方と、日頃の生活習慣や社会活動との関係を調べました。その結果、年を重ねることを前向きに捉えている人ほど、「普段から定期的に運動をしている」割合が高いことが分かりました(図5)。
また、社会活動について調べたところ、年をとることを前向きに考えている人ほど、「町内会などの地域活動」に参加している割合が高いことが分かりました(図6)。
定期的な運動習慣や、社会活動をしている高齢者は、そうでない高齢者に比べて長生きで、要介護になる可能性も低いことが、多くの研究で分かっています。
これらの結果は、加齢に対する考え方が、日々の行動や社会との関わり方と関連している可能性を示しています。年を重ねても、それを前向きにとらえ、できることに目を向け、世代をこえた人との交流も大切にしながら、身近な人や地域と関わってみましょう。無理のない運動や趣味、社会活動を楽しみながら続けることが、前向きな毎日につながります。
図5. 加齢への期待度と、定期的な運動習慣の関連

図6. 加齢への期待度と、地域活動への参加の関連

